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イヌイットの村では「アルコール」がとても大きな問題を生んでいます。
Kugluktukからは飛行機で1時間半ほど行かないと隣町にも行けません。
生活に必要な店や施設は揃っていても、映画館やショッピングモール、その他のエンターテイメント施設がある訳でもありません。
スノーモービルやボートを持っている人はハンティングやキャンプに行くことができますが、この小さな村の中でじっとしていることがほとんどです。
それで、毎晩のように多くの人が友達と集まって、どこかの家で夜遅くまでお酒を飲みます。
村の端から端まで15分ほどで歩けてしまう小さな村で「みんながみんなを知っている」状態です。
もし誰かが問題を起こすと、次の日には村中の人が知ることになります。そんな中でイヌイットの主人と結婚したことで、私にもその情報が即座に届きました。
「昨日の晩、~さんが奥さんをなぐった」
「~さんが外はマイナス35度なのに、泥酔状態で皮のジャケットとジーパンで外に出て眠ってしまい凍死した」
「~君が自殺した」
「~さんが彼女に発砲した」
「~さんがマリファナ所持で逮捕された」
これらは、ほとんどがアルコールが入り酔っぱらった末の事件でした。
こういった話をしょっちゅう聞きました。みんな、町で顔を合わせ挨拶をしたことのある人たち。中には親しい友人もいました。
その後、私は小学校で働くことになるのですが、その時に知ったのは多くの子供たちがご飯も食べずに学校に来ていること。
政府から生活のためのお金は十分もらっているけれど、お酒を買うためにお金を使いこんで食費がなくなる上に、朝までお酒を飲んで子供をほおっておく親が沢山いました。
そういう現実を目の当たりにすると、私の心はぎゅーっと絞られるように痛んでいきました。
こんな大自然の中で暮らしている人たちにもこんな悲しい現実があるんだと。
自分がこの町の住人となったことで、イヌイットが直面している現実がわかっていきました。
-20-につづく
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